日々是精進 

日々の事、思いついた事等を書く予定、サボリ気味だったのを治そうかなと

ひつじ昔語りー因縁話

今日は台東区竜泉にて、妖談会なるイベントを開催しております。
これから書く、ほんのり怖い?話等を含め、神様のお話や妖怪のお話、
実話怪談等を披露しているかな。

では、今回のお話開始っと

良く聞く「因縁話があってね」とか「一族の忌み話があってね」とか、
喜々として話してくれる方がいますが、大体はこじつけの話が多く見受けられます。
一つ一つは何でもない話ですが、それを無理矢理捩じ込んで関連つける人いますよね。

先日も懇意にしている方から、「家の一族の因縁話を聞いてくれ」、
そして「解決方法も伝授よろしく」と相変わらず自分勝手な物言いをされました。
その方の家系は古く、家系図で追うと江戸より前で、かなり上流階級の家柄です。
今もそれなりの家のお方ですから、伝統と家風を守られている人なんですよね、
私の眼からは怪談バカなおっさんですがね。

日記風の記録が結構残ってましてね、綴ってある書が大量にありまして、
何でも過去の覚書とか日記なんでしょうね、その頃何がありましたとかかな。
当代のこの人が編纂をしようと思い立ち、電子化を始めた訳です。
お弟子さんや秘書さんを投入し、せっせと解読と打ち込みをしてますね。
伺った時に、皆さん本業の合間にそれをやっているので、憔悴しきってましたよ。
初代のあたりは綴を読み解く辺りからやってるので、古語辞典やらが山積みだったな。

彼らの努力の成果で、初期の100年くらいは電子化出来たので、
ゲラを読んでみましたが、彼がとても興奮している。
「代替わりがこんな頻度であってな、俺は何かあると思うんだ」と
彼は興奮していますが、自分の知識の中で言うなら、古い時代は人生が短かかったと記憶している。
即ち代替わりも早かったと思われる、早い時は子供の代で継ぐも、元服しないで亡くなる場合もあったのだから。
戦や天災での当主没が多かったが、彼はこれぞ因縁だと言ってたのだが、
打ち込みしてる皆さんは、首を大きく振り被っていた。

結局当代の当主である彼の思い込みから始まった編纂は、近代近くまで来たが、
そこらで記録が消えている、何故かと疑問に思った様だが、
秘書達が思い出したように、現当主へ告げた。
「旦那様、ここから昭和二十年代までの資料は別へ保管してあります」と聞かされ、
「どうしてお前らが知っているんだと問うと」
「先々代より資料の封印をするように、代々の秘書及び関係者には知らされております」
それを聞かされた現当主は憤慨し
「今すぐ俺の権限で出せ、若しくは場所を教えろ」と暴れたそうだ。
然しながら家柄ですかね、屈強なお兄さん達がいらっしゃって、彼を押さえ込み奥の間へ連行したそうです。
彼の祖父は現役ですし、私も何度もお会いしてますが、昔の武人の様なお方で怖いですよ。

さすがに孫のやり方に引っかかるモノあったのでしょうね、
私も呼ばれまして、今までの事全部話しましたよ、怖いものですからね。

その後、現当主は余程怖い思いしたのか、編纂していたモノについては、
一切話しなくなりましたね、もう見たくないとか言いまして、
部下に蔵への再封印を言い渡し、中途の編纂した資料は、先々代様が握っています。

騒動が片付いた後日、先々代様からお呼びが掛かり、伺った時に言われました。
「事のあらまし辺りは、話の種にしても構わぬが其れ以降は解ってるよな」
と口角を上げ射竦める眼をされてましたね、嗚呼怖い怖い。

で、今回のこの話、当初は現当主、中間部分の編纂の話は秘書さんたちから、
最後の締めは、先々代様とそれぞれお話を聞きまとめた次第です。
一応内容は確認頂いて了解を得たものです。
勝手やったら俺の今が危ないじゃないか。


2015年8月12日
黄色いひつじ